2019.4.24(wed)十三FANDANGO
オフィシャルライブレポート

ガガガSPツアー2019『日本最古の青春パンク街道一直線 2000-2003』。3月2日東加古川Star Danceを皮切りに、6月29日札幌BESSIE HALLまで計16本の対バンツアーが現在開催中である。ほぼ折り返し地点に近い7本目が4月24日、十三FANDANGOで行なわれた。今回のツアーは、その名の通り、2000年デビューシングル「京子ちゃん」から2003年2ndアルバム「オラぁいちぬけた」までの楽曲のみを演奏するコンセプトツアー。

2000年から2003年というと、メディアが勝手に作った青春パンクという言葉がひとり歩きした青春パンクブーム真っ最中の頃。もちろんガガガは、そんな言葉に振り回されない様に、初期衝動をぶつけまくり、第一次黄金期を作り上げていた。

この日、FANDANGOは平日では有り得ない程の超満杯状態。特に当時青春時代を過ごしたアラフォー男女の姿が目立った。みんなガガガのTシャツを着て、首にガガガのタオルを巻いて、心は当時にタイムスリップ。ちなみに対バン相手Age Factoryのボーカル清水エイスケは1994年生まれ。高校生の頃にガガガを聴いていた事をMCで話していたが、という事は2000年~2003年のガガガはリアルタイムでは無い。そう考えると、1997年結成というガガガの歴史の長さを感じる。1999年に加入したギターの山本聡は、当時まだ高校生だったという。そんな山本も今年38歳を迎える。

「こういう時だけ入りやがって! でも、あんたらの中にウチらの曲がある事を誇りに想います!」と今年40歳を迎える唄い手のコザック前田は、開口一番観客たちに叫ぶ。1曲目「国道2号線」のイントロのギター音色が聴こえただけで、凄い歓声が起こる。フロアでは、モッシュダイブも乱発している。そりゃ、危険行為になるといけないが、この日の観客たちのモッシュダイブは喜び嬉しさの表現というか、とにかく喜び嬉しさが爆発していた。

69年発表の高田渡「自衛隊に入ろう」、72年発表の友部正人「一本道」のカバーなど懐かしい歌が続ていく。高田や友部のフォークの名曲を、当時パンクで新しい解釈をした素晴らしい楽曲たちは、改めて再評価されるべきだと想う。そして、当たり前だが、どの楽曲も決して懐メロにはなっていない。この2019年までに、ガガガは前田の精神的疲労による休養など色々な事を経験してきた。初期衝動の象徴とも思える2000年~2003年の楽曲ではあるが、そういう経験の積み重ねによって、深みや厚みを増して、見事に2019年仕様にアップデート更新されている。

個人的には、ベストアルバムでも新曲が1曲収録されてるだけで、とても満足が出来る。今までの歴史のベストがまとめられた上で、次どこへどう向かうかという指針を少し見せてもらうだけで、こちらは嬉しいもんだ。そんな中、最近では久しぶりにライブに来ましたと言われる事が増えたと話す前田。特に、このツアーは、そういう人も多いだろう。「『あの当時、良かった!』とか言うけど、いざ、あの当時に戻ったら結構大変よ!」と前田は笑いながら、「とりあえず、今をやっていこう! 新曲1曲聴いてもらっていいですか!?」と伝えて、ちょうど本編中盤に差し掛かった10曲目で、新曲「イメージの唄」を披露した。

山本作詞作曲の、この曲はセンチメンタルな気分になる緩やかなギターリフから始まるミディアムナンバー。スローなフォークナンバーは今までもあったが、この様なテンポのフォーキーなロックナンバーは今までのガガガには無かった。そして、何よりも「元気でいるか? そちらはどうだい? 上手くやってるか? どうにもならないことばっかりさ なんとかしようぜ」という寄り添うかの様に語りかける歌詞が、たまらなく胸を打つし、とてつもなく心に沁みる。ふと、サニーデイ・サービス95年の楽曲「青春狂走曲」の秀逸な歌詞も想い出した。当時23歳だった曽我部恵一は自身の10代の青春時代全てに向けて、その言葉を捧げていた。現在40歳目前のガガガは自身の20代、30代の青春時代全てに、その言葉を捧げている。

大変な日常生活を忘れる為に、当時の楽しかった青春を思い出し、狂騒しまくっていた観客たちも、ガガガの穏やかな語りかけに、ふと我に返り、今という日を見つめ直そうと柔らかい表情を浮かべていたのが印象的だった。デビュー当時、フォークにパンクを乗っける新発明をしたにも関わらず、メディアが勝手に作った青春パンクという言葉で括られ、それでも誠実な前田は、その言葉を背負って、みんなの期待に無理してでも応えようとしてきた。「自分で自分を青春パンクという言葉で縛っていた30代」と前田はMCでも話していたが、その呪縛から見事に脱皮して、第二章へ向かう事を証明できた新曲だった。

ライブハウス「太陽と虎」の経営者、日本最大規模のチャリティーイベント「COMIN’KOBE」実行委員長でもあり、前田と同い年で盟友だった松原裕が4月4日に亡くなり、デビュー当時から愛してきたFANDANGOも7月31日に営業を終了する。この日、前田は松原の最後を看取った話をして、彼に「心の唄」を贈った。そして、FANDANGOの名前を入れ込んで、本編では「さびしんぼう」、アンコールでは「世界は二人のために」を歌った。ライブ中のMCでも「今日の様なガーッとしたツアーは、いつやるかわからないですけど、青春は続いていく」と話していたし、ライブ終了後、FANDANGOの階段の上でも「40歳を前に一度清算したかった」と打ち明けてくれた。

計らずも全ての青春にさよならを告げて、新しい青春へ旅立つ事になったガガガSP。まだまだツアーは続くし、夏の東名阪3都市追加公演も発表された。長年のファンはもちろんの事、長らく観ていないという方も、今のガガガSPを是非とも体感して頂きたい。

取材・文 / 鈴木淳史
ライブフォト / aigo shintaro